映画で旅するイスラーム世界、歴史を変える音楽のパワーと情熱。

歌う男性

イスラームの世界には、様々な社会情勢を抱える国々があります。宗教や民族の違いによる苦悩を抱える若者たちの現実や青春時代の葛藤、困難に立ち向かう力強さ。ハラールカルチャーの世界で生きる若者たちの真実の姿や音楽への情熱を描いた、おすすめの青春映画をご紹介します。

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占領、貧困に立ち向かうパレスチナのヒップホップ

『自由と壁とヒップホップ』 2008年/パレスチナ・アメリカ

パレスチナのラップミュージシャン、DAMの活動を5年間追いかけたドキュメンタリー映画。長い歴史を通して、ユダヤ人とアラブ人の宗教的、民族的対立が続き、空爆や貧困、占領などに脅かされるパレスチナ。「生きる」だけでも困難な状況の中に置かれながら、音楽の力で様々な壁を乗り越えようとする若者たちの姿が描かれています。

アメリカで生まれたヒップホップやラップ音楽は今や世界中に広がり、日本でも人気ですが、音楽に込められている情熱や思いの温度差を感じ、胸が熱くなる作品です。分断された社会で自由を失い、音楽機材やライブを行う場所を探すことさえ困難な状況での音楽にかける思い、願い、祈り。

この映画を観る前に、パレスチナの歴史や社会情勢などを少し知っておくと、彼らの魂のドキュメンタリーをより深く理解することができるはずです。今生きてるこの瞬間に自分自身がどう在りたいか、彼らのような状況だったらどう生きているかなどを考えずにいられません。

イランの若者が夢見る自由と音楽への情熱

『ペルシャ猫を誰も知らない』 2009年/イラン

イスラム教を国教とする国の中でも政府による統制が厳しいイラン。西洋文化やポップミュージックも規制される中で、音楽を愛し、夢を追いかける若者たちの姿を描いた映画です。

好きな音楽を演奏するだけで逮捕されるイランを離れて、ロンドンで公演しようと夢見るミュージシャンが、パスポートやビザ取得など、厄介な出来事に遭遇しながらも、進んでいく姿。バフマン・ゴバディ監督自身も無許可の撮影を敢行し、逮捕と保釈を繰り返しながら完成させた作品です。

どんなに厳しい規制があっても、好きな音楽を演奏したいという、若者たちのシンプルな思い。イランの若者たちのユーモアや逞しさ、ロック、ブルース、ラップなど、イランのアンダーグラウンド音楽の幅広さも楽しめます。

インドのスラム街から生まれた人気ラッパーの伝説

『ガリーボーイ』 2018年/インド

今回ご紹介する3作品のうち、いちばん最近の映画がこちら。インドで活躍するラッパーの実話を元にしたストーリーで、最後まで飽きることなくその世界に引き込まれっぱなしだった、お気に入りの作品です。さすが、映画大国インド!映画製作に関する歴史と技術と情熱が注がれた素晴らしい1本。全世界で大絶賛された新世代ボリウッド映画は2時間34分とかなり長めなのですが、エンターテイメント性が高く、見ごたえあり!

インドというとヒンドゥー教を思い浮かべがちですが、イスラム教徒やキリスト教徒、シーク教徒の人たちも暮らしており、様々な民族、カーストで構成されています。そういう身分の違いなども描かれていて、まだまだ世界にはいろんな社会があるんだなと再確認させられます。

あらすじはというと、インドの天才ラッパーNaezyの実話を元にしたストーリー。ムンバイのスラムで暮らし、大学に通うムラドが、校内で見かけたラップに魅せられ、ラップバトルを目指していく物語です。ムラドがこっそり付き合っている恋人は、裕福なイスラム家庭の女の子。ラップに出会ってのめり込んでいくムラドの姿、ムラドを愛する故の嫉妬で暴走する恋人の姿。音楽的なサクセスストリーとしてもステキな映画なのですが、登場人物たちのキャラが個性的で観ていて飽きない青春映画です。

現時点で無料配信しているサイトはないようなので、作品を実際に観てみたい場合はレンタルするか、購入するかになるようです。よろしければ、DVDの商品リンクもチェックしてみてくださいね。